トランクルームは、新しい住空間のあり方を可能にします。トランクルーム自体は単に「荷物を置く場所」に過ぎませんが、それによって住まいの姿が変化し、暮らしが再編されるのです。足りない収納スペースを補うばかりでなく、そのときどきに不要なもの目に入らないこと、住空間が外へ広がることで、住まう人の心理が伸びやかになり、活動が活発化します。ここでは日本の住宅事情を代表する墨田区東向島を例にトランクルームの合理的な活用法のノウハウすべてをお伝えします。
日本の住宅とオフィスにぴったりのトランクルーム
トランクルームは特にアメリカで普及しています。日本での利用度はまだその10~20%程度。しかし昨今、日本の狭小住宅、賃料の高いオフィス環境の救世主としてテレビ番組で紹介されたこともあり、認知度が急激にアップ。物件数も増えましたが、条件のよいトランクルームは満室率が高く、利用者間の争奪戦も見受けられます。ただし条件は、用途によって以下の3つに大きく分かれます。
屋内型トランクルーム
屋根のある室内にトランクルームが並んでいるタイプです。屋外型やコンテナとの大きな違いは、温度の急激な変化がないことです。そのため、基本的には入れるものを選びません。自宅の部屋に物を置く感覚で利用できるため、最も人気の高いタイプとなっています。
利用者の側からは、住空間の拡張として使うことが可能です。その際、倉庫や工場を転用したタイプは天井が高く、床がコンクリート・リノリウム貼りになります。通常は物置を連ねたものを設置してあります。
一方で、店舗や住宅を転用したタイプは床が絨毯貼りとなり、オフィスの延長、自宅の離れ座敷の雰囲気で落ち着いて使うことができます。最近はパーティションによって区切られたものが多く、メッシュの金網を通して天井から光が入ります。
屋内型トランクルームは、雨天時や風の強い日などにも荷物の出し入れが楽、というメリットがあります。また自分のスペースや廊下なども使って荷物の整理をしたり、簡単な事務作業をしたりすることも、ほとんど人目を気にせずできます。
屋外型トランクルーム
屋外の敷地に物置を並べたタイプのトランクルームです。自宅の離れやオフィスの延長というよりも、物置の集積所というイメージです。自宅の庭に物置を設置したいが場所がない、という場合に利用すると考えれば間違いありません。屋内型トランクルームよりも割安に借りられることが多いというメリットがあります。
ただしトランクルーム自体が直射日光にさらされるため、夏季には高温になります。温度変化によって傷む可能性があるものは収納できません。雨天時には傘を差しながらの開閉となり、また物置の製品によっては軒から雨水が滴ることがあるので、水濡れに敏感なものの収納もおすすめしません。強風時なども屋内型に比べて利用が制限されます。
屋外にあるストレージとして、トランクルーム以外の余剰スペースが広くて車を停めやすい、バイク駐車場が併設されているなどユーザーによっては利便性が高い場合があります。
コンテナ
屋外型トランクルームの一種ですが、大きなコンテナが戸外に積まれ、丸ごと一つずつ貸し出すものです。大量の荷物がある業者などが重宝します。面積当たりの単価は最も低くおさえられます。
屋外型トランクルームですので、夏場はやはり高温になります。温度によって傷みやすい家財、発火するおそれのある物品の保管には特に注意を要します。しかしながら広めのスペースを借り、トラックで乗りつけて大量の資材を次々放り込んでゆくなど、作業の効率化がはかれるメリットがあります。
日常の利用については、大きなコンテナによって敷地の見通しが悪く、犯罪に利用される例もあるため、女性一人では開け閉めしないようにします。
またコンテナ特有の問題として、自治体によってはコンテナを建築物とみなすなど解釈が変わる場合、また事件や事故が原因で地元住民から撤退を要求される場合があります。万一の急な契約解除にも代わりのストレージをすぐ手配できるよう、あたりをつけておく心構えが必要です。
墨田区東向島でのレンタル収納パターン例
都内であり、小さな工場や商店が軒を連ねる墨田区東向島は、比較的ビジネスユースでのトランクルームのニーズが多いところです。一方では古くからの住宅地でもあり、浅草や向島の奥座敷として知る人ぞ知る、伝統ある土地でもあります。
ここで需要が高いのは室内型トランクルームです。職人の町でもありますが、工具類は繊細な造りのものや精密機器も含まれ、激しい温度変化に耐えません。商店の在庫は湿度に敏感です。また家庭の需要としても、狭い間取りの家が多いため、本来は室内に置くものを収納するケースがほとんどです。
大きなコンテナは湾岸や川沿い、河口近くなどにあり、工事の資材や積荷の上げ下ろしのニーズに応えています。屋外の物置型については、これらの地域と人口密集地との中間に見られます。やはり家庭用よりは工事現場などに使われるものを収納するケースが多く、コンテナほどの大容量を要しないものに使われます。コンテナは法人契約、屋外型トランクルームは屋内同様に、個人事業主や個人の契約が多くなっています。
トランクルーム活用術 ー東京下町の住宅・オフィスのニーズに合わせて
住空間に余裕のない日本では、トランクルーム活用が欠かせなくなります。以下は、日本の住宅・店舗・オフィスの事情に特化したトランクルーム利用の実際です。
個人・家庭の利用
① 日本の都市部では、住居の間取りが特に小さめです。広い物件を探すのには困難がともない、見つかっても住居費が相当に高額となります。トランクルームなどレンタル収納・外部ストレージを活用することで、出費は最小限におさえられます。
② 地方からの転入の多い首都圏などでは、それまで広い住居に置いていた荷物の収納場所を確保するためにトランクルームが利用されています。
③ 都内でも住居賃料が比較的安い下町地域は若い夫婦も多く、成長する子供の荷物置き場としてトランクルームが便利です。
④ 一方で高齢の住民にとっては、昔からの思い出の品、文化財ともいえる書籍などの保管場所が下町地域の悩みの種になっています。トランクルーム活用は、息子さんや娘さんから提案されることが多いようです。
オフィス・店舗の利用
① 小さな店舗が密集する東京下町では、在庫の置き場にトランクルームを活用。特にブティックなど衣料品を扱う店、また IT 関連など精密機器の収納場所として、空調も整ったトランクルームが重宝されます。
② スモール・オフィスに溜まる一方の書類は、棚を持ち込んで設置できるトランクルーム収納に最も適しています。
住居の移動にかかわる利用
① 改築時の数ヶ月間のトランクルーム利用は、最もポピュラーなものです。
② 転勤時の数年間、トランクルームに家財を収納しておくと、家賃の節約になります。
高齢者にかかわる利用
① 入院などの際、病院近くのスペース確保に活用できます。
② 施設に入居、もしくは退去の際に身の回りのものを保管すると便利です。
③ 高齢者にとって、思い出の品は非常に大切です。いつでも取り出せる状態にしておくと、安心してもらえます。
趣味のための利用
① 楽器や自転車、書籍など、置き場に困るお気に入りを大切に収納します。
② コレクションを並べるなど自分だけの小部屋として利用できます。
墨田区東向島でのトランクルーム活用実例
スカイツリーにほど近い下町の墨田区東向島は、上記の活用事例のすべてが見られます。レンタル収納によるスペース活用が盛んな典型的地域ですね。理由としては、下町特有の住居の間取りの狭さ、小さな店舗や工場、事務所が多いことの他に、以下のような多様な特性も見られ、それぞれに工夫された利用例を作り出しています。
① 都心に近く便利だが、家賃が比較的安い。そのため地方からの流入者が多い。地方に比べると手狭なため、引っ越し前にトランクルームを契約する。場合によってはトランクルームを先に決め、その近くに新居を定めることもある。
② その一方で古くからの住民も多く、高齢者の思い出の品や施設入居時の荷物の収納スペースについて需要が高い。書籍や工芸品など一種の文化財といえるものを抱えている場合には、換気や監視などに関するきめ細かな対策を施したトランクルームを活用する。
③ 地方から流入の夫婦に子供が生まれる、また高齢者のいる三世代同居であるなど、個人の部屋を確保しづらい地域では、特に趣味のスペース、安らぎの場所として機能する場合がある。
利用を決めるチェックリスト
収納物についてのチェック
① 多少の水濡れ、高温に耐えられる荷物か Yes→ コンテナ・屋外 No→ 屋内
② 大量の資材などか Yes→ コンテナ No→屋内・屋外
トランクルームについてのチェック
① 防犯カメラなどの設備はあるか。女性が出入りするのにも安心な、見通しのよい環境か。
②換気の設備は専門的に考えられているか(カビ防止)
③ 駐車スペースは用意されているか
④ 料金設定に初期費用や更新料、保証料など見えにくいコストが追加されないか。
⑤ 部屋サイズの変更にフレキシブルな対応ができるか
⑥ 運搬の手伝いなど細かい相談にのってくれるか
⑦ 24時間利用可能か
墨田区東向島で聞いた利用の決め手
① 料金が複雑なトランクルームは避けました。知らないうちに余分にかかるのは困りますし、墨田区は下町気質の土地柄で、ややこしいのは合わないと思います。
② 出し入れするのは家内ですので、セキュリティと立地を重視しました。人通りや人目さえあれば、東向島近辺では皆が声を掛けあうので安心です。
③ 狭い通りが多く、車を停めるスペースにはいつも苦労しています。無料の駐車スペースが複数あるところを探しました。私の住まいは東向島ではないのですが、歩いていける近場より車で行きやすいところの方が便利です。
④ こちらに引っ越してきて、部屋が狭いのにあらためて驚きました。自宅の離れのような雰囲気で使えて、24時間気兼ねなく出し入れできるところ、清潔感のあるトランクルームを近所の人に教えてもらいました。
最先端のトランクルーム技ー墨田・浅草・東向島・スカイツリーの実例
以下に、日本における利用の典型例として、東京下町である墨田・浅草・葛飾・スカイツリー周辺における地域密着のアイデア利用を挙げます。
東京下町ならではの例
① 特に小さな間取りの住宅が多い墨田区や台東区、葛飾区では、まずトランクルームを確保して荷物を置いてから、その周辺に住むところを探すというワザも。トランクルームに荷物を置いたまま、気に入った新しい住まいを気軽に転々とする、という新しいタイプの都市型住民も出現しています。
② 東京下町は職人のメッカ。職人に欠かせない道具の収納場所として、職人ストレージが定着しつつあります。月末に集金する職人の慣例に対応し、月々の使用料の支払い日を調整する例も見られます。
③ 住居からの物理的な近距離ばかりが重要な要素ではありません。個人でも勤め先から車で便利、季節ものの入れ替えに実家に近い、といった理由で、下町繁華街やターミナル駅から離れた奥座敷のトランクルームを借りる例がよく見られます。
文化・観光の地ならではの例
① 東京下町には高齢者が所有する古書などの文化財が多く眠っており、トランクルームを活用して管理・保管することでその所在がオープンになり、閲覧者にもアクセスしやすくなるという文化的なメリットが生じています。
② 観光地として栄える浅草・スカイツリーですが、この地域の店舗・オフィスにとってはトランクルームの賃料が高いのが悩みのタネ。一方で車で5分ほどの墨田地域などは賃料が安く、無料駐車スペースがあれば離れの倉庫としてリーズナブルに活用できます。
墨田区・台東区・葛飾区 あるあるトランクルーム活用術
① 墨田区の白鬚病院、済生会病院の入院患者さんとお見舞いのご家族は、トランクルームを活用して入院生活に必要な荷物を置いたり、着替えたりする拠点として活用される方々もおられます。
② 地域活動が盛んな墨田区・台東区・葛飾区で、バレーボールチームや劇団でトランクルームを借りる場合、複数キーで対応することが可能です。扉の内側に掲示板を用意して、メンバーのコミュニティの場としても利用できます。
③ ネットを活用した小出版社が墨田区・台東区・葛飾区には数多く創立され、トランクルームを利用した在庫管理でコストダウンを実現しています。
東向島におけるトランクルーム利用の未来型
住居とビジネス融合型の東京下町の典型である墨田区東向島は、上記のようなトランクルーム利用の最先端技が実際に見られ、さらに将来の姿を垣間見せています。そのキーワードはそれまでの「空間」に「人」が加わったもの。以下に例を挙げます。
① 24時間気楽に出し入れできる利便性は必要ですが、何かあれば状況をすべて把握している担当者に連絡を取りたいもの。緊急時に備えて、24時間繋がる担当者直通の電話番号を利用者全員に伝える、というサービスがあります。緊急事態を早く把握したいのはトランクルーム側も同じですが、大手の集中窓口とは異なるスタンスです。そのスペースはユーザーのものであり、トランクルームのものでもある、という共有意識ですね。
② 共有意識はトランクルームのある通り、町全体にも見られます。トランクルームの人の出入り、照明の点灯や自動販売機の存在が、鄙びた商店街や住宅地の治安を向上させています。そしてトランクルームへの人の出入りを、商店街の店頭に立つオーナーたちが見守る。まさに東京下町ならではの光景です。
③ トランクルームの玄関先は駐車スペースや荷物の上げ下ろし場所が確保され、広々としているもの。そこが自然発生的に近所の人たちの井戸端会議スペース、幼稚園バスを待つお母さんたちの居場所、正月飾りの販売所など、ちょっとした待ち合わせ場所、人々が集まる場所になっています。そこに殺風景なトランクルームという姿はありません。
④ アパートなどより気楽に借りられるトランクルームですが、当面の不要物を入れたままつい放置することも。そのため連絡先を複数記録してもらい、必要があれば実家の親御さんや兄弟に連絡を入れます。結果として利用者の安否確認になることもあるなど、地域における「地縁」が深まっています。
まとめ
トランクルームはアメリカからやってきた新しい住まい方・ビジネスの基本ツール。それが一番ぴったりなのは意外にも東京下町地域でした。たしかに墨田区・台東区・葛飾区は都心にも近く、新規に住まう方々を多く受け入れています。一方でスカイツリー・浅草などの観光地も擁し、小さな商店も多く、古い文化や暮らしのストックがあることを考えますと、当然かもしれませんね。